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フットボールと人びと Arabic

アラビア語メディアのサッカー記事で読む中東地域の現在

活況呈すアフガンリーグに日本が貢献していた

今回の記事は、ウクライナアフガニスタン、シリアに関する記事です。

昨年から今年春先にかけて行われた、ロシアワールドカップをめざす、アジア第2次予選。日本はアフガニスタンと同じ組に入っていました。ご存知の通り、アフガニスタンは15年たっても治安が回復しないということで、アフガニスタンのホームゲームは、中立国のイランで行われました(結果は日本が6対0で勝利)。

そのときは知らなかったのですが、今回翻訳した記事で、アフガンでも国内リーグが行われていることを知りました。また、日本の資金援助でリーグ戦開催の環境を整えることができているとのことです。これはさらに知らないことでした。

 戦乱で荒廃した国・地域への援助は様々ですが、こういう形での援助なら賛成した気持ちになります。日本らしい援助の形ではないでしょうかね。

日本はもっとこういうことを予選のときに宣伝しておれば、サッカーファンに対するいいアピールの場になっただろうにと思います。

 


元記事URL:

http://www.bbc.com/arabic/sports/2016/09/160902_football_front_lines

 

たたかいの前線に立つフットボール

BBC アラビア語
2016年9月2日
ビル・ウィルソン(経済問題担当エディター)

 

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ウクライナ西部のリヴィウでヨーロッパチャンピオンズリーグの試合を行うシャフタール 写真=كرة القدم على خط النار - BBC Arabicより)

 

世界のいたるところで、サッカーファンは興奮しながらサッカーを楽しんでいるが、金や名誉が役に立たないような世界のいくつかの地域では、事はそのようにはいかない。だが、世界各地の紛争地においても、サッカーは行われている。そこではサッカーをすること自体、危険に身をさらすことになり、また、そこでプレーを続けること自体、ある強力なメッセージを発信することにもなる。

たとえば、マンチェスター・ユナイテッドは、まもなく始まる今シーズンのヨーロッパリーグで、ウクライナのゾリャ・ルハンシクと対戦するが、安全を図るため、試合はゾリャ・ルハンシクのホームタウンから560マイル離れたオデッサで行われる予定だ。この2年以上、ルハンシクは、自らのホームタウンで試合を開催することができないでいる。

2014年、ロシアはウクライナ南部に位置するクリミア半島を併合した。それ以来、ルハンシクと周辺地域はロシアとの紛争の中心地に置かれているのだが、同クラブは昨シーズン、ウクライナリーグで4位に入った。

併合直後、ロシアリーグはクリミア半島の3チームを同リーグに統合した。一方で、ウクライナ東部ドネツクという町のシャフタールとオリンピックの両チームは、紛争が原因で、本拠地をキエフに移したが、今シーズンのウクライナリーグでは、そのシャフタールが首位に立っている。

血と汗と涙

困難を極めるウクライナだが、アフガニスタンやシリアに比べればまだマシだと言える。

アフガニスタンでは先週、5シーズン目の国内リーグが始まった。リーグは2012年に創設され、複数のリーグ関係者によると治安状況が悪化しているにもかかわらず、リーグは国内で定着してきている。

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(5シーズン目に入ったアフガンリーグ 写真=كرة القدم على خط النار - BBC Arabic

 

リーグ創設に関わったクリス・マクドナルド氏は、BBCの取材に対し、次のように話す。「リーグが今のような状態になるまで、多くの血と汗と涙が必要でした。たいへんな5年間でしたが、同時にすばらしい5年間でもありました。アフガニスタンでもサッカーファンは増えました。サッカーは多くの娯楽と幸福をもたらしました。こういう状況はこれからも続いていくでしょう」

アフガンリーグは今シーズン、新たなスポンサーを獲得した。来シーズン、アフガニスタンでは初となる十分な照度を持つ照明施設を、国内の複数のスタジアムに設置するため、日本政府が援助資金を増額することになっているのだ。

もろい治安状況

リーグ関係者によると、プレー面においても、タジキスタンから複数のコーチが加わったことによりレベルが向上し、リーグ参加チーム間の競争力も高まったという。

マクドナルド氏は、サッカーが若者を(イスラム)過激主義や薬物という陥りやすい罠から遠ざけているなど、社会的な面でも変化も起こっていると話している。

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(8チームが参加して行われているアフガンリーグ 写真=كرة القدم على خط النار - BBC Arabic

 

しかし、リーグは大きな壁にも直面している現実もある。首都カブールには有権者から選ばれた政府が存在しているが、そこにはいたるところにタリバンの拠点も存在しているのである。

元バスケットボール選手であるアメリカ人のマクドナルド氏もそのことについてこう話す。「われわれがリーグをスタートさせた時、治安状況はまだマシでした。今は当時よりずっともろくなっています。タリバンは多くの地域において強力な存在になっています」

同氏によると、このもろさは、新たなスポンサーがアフガンリーグに参入、支援することをちゅうちょさせる理由になっているという。

リーグ運営センター

アフガンリーグは(トップリーグとともに)国内8地域で行われている各地域リーグで構成されている。すべての練習と試合はカブールとガージーの2つのスタジアムで開催される。またリーグの開催期間は、資金面、ロジスティクス面を考慮して短期間で行うようにしている。

マグドナルド氏は言う。「各チームはリーグの運営センターの管轄下に置かれ、センターはロジェスティック面でわれわれを支援することになっています。おそらく将来は、選手個々の保有権や、クラブを経営する会社の所有権などについても研究していくことになります。しかし今のところ、これについて具体的な計画は何もありません」

リーグへの融資は、センターと契約するスポンサーにより行われ、サッカー連盟が、いかなる赤字についても保証することになっている。また、来シーズンからのスタジアムの照明設備の整備は、テレビ放映権の売却に資すると期待されている。

曖昧な保有権

ジェイムズ・モンターグ氏はサッカーに関する取材のため、戦争が国をズタズタに切り裂いたもう一つの国、シリアを訪問した。その成果は、『金曜日がやって来るとき』(When Friday Comes: Football, War and Revolution)という中東地域のサッカーをテーマとした著作にまとめられた。モンターグ氏は、「紛争地域ではしばしば見られることですが、国内リーグは運営可能な規模に縮小されて実施されます」と言う。

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(シリアリーグは首都ダマスカスで行われている 写真=كرة القدم على خط النار - BBC Arabic

 

「それはエジプトでもそうでしたし、そして現在、シリアでも同じように規模を縮小して行っています。中東地域では、サッカーは冬のスポーツです。しかしそのサッカー・シーズンはヨーロッパに比べ、かなり短いのです」

そしてモンターグ氏はこう続ける。「驚くべきことに、シリアでは国内リーグが継続して実施されています。また興味深いことですが、国内の主要な公的機関はそれぞれサッカークラブを保有しているのです。伝統的にそうなっています。アルジャイシュ(アラビア語で「軍隊」という意味)がリーグの王者で、アジア連盟リーグカップアジアチャンピオンズリーグの下部に位置付けられるアジアのクラブチームによる大会)に参戦しています」

同氏はさらにこう続ける。「シリアサッカー連盟は、利益を生み出したり、放映権料を獲得するため、試合の民営化を決定しました(訳注:「試合の民営化」が何を意味するのか不明)。決定では、連盟はチームを買収することを民間企業に認めているのですが、現在、そのクラブを誰が保有しているのか知るのは大変難しくなっているんです」

変わらぬ力

アフガニスタンと同様、シリアでも国内リーグは1か所で、つまりダマスカスで行われている。モンターグ氏によるとそれは、ダマスカスは試合を開催する上で、相対的にまだ安全だからだという。

リーグに参戦するチームはそれぞれ次の都市(町)を代表している。すなわち、ダマスカス、ホムス、アレッポ、ハマー、ラタキア、ハサケ、カミシュリである。リーグでは現在、アルジャイシュが首位を占めている。

以前なら重要な試合のときはおよそ5万人もの観客を集めていた同リーグだが、現在は数百人を集めるに過ぎない。試合のチケットの価格は、モンターグ氏によると「安価」だという。

モンターグ氏はこう話す。「シリアでサッカーの試合を行うのは、治安的には危険な状況です。大勢の選手は攻撃に身をさらすことになります。何人かはすでに命を落としていますし、何人かは重傷を負っているのです」

そして同氏はこう付け加える。「しかし、リーグ戦の開催はサッカーが持つ変わらぬ力を示しました。そうであるからこそ、リーグは継続されているのです」